51 猫のやきもち
猫は夜行性の動物といいますが、夜中もさることながら早朝からお昼前までのマローネ君のドタバタぶりはなかなかに凄まじいものです。家の中を猛スピードで駆け回り、いったい何が起きたのかと瞬時の混乱に招かれることもしばしばです。ネコ科の動物はやっぱり狩の王様、何かに夢中になって目の前を勢いよく駆け抜ける小動物はやはり種族が違う生き物で、まさしく脱兎のごとく走る猫・・などとその一人遊びの狩ごっこに感心させられます。
午後になってしまえば平穏の象徴そのものと化し、くうくうと寝息さえ立てて愛らしい寝顔を見せながら眠りこけるのですが、そのお休みタイムの前の微妙な時間帯、彼自身どうにも自分をもてあますものらしく、猫は眠いとぐずるものなのだぞと言わんばかりに、実に激しい「かまってちょうだい攻撃」に打って出ます。
猫の気持ちは猫に訊かなきゃわからないものですが、人間でいうところのヤキモチという心理は想像以上に強いものらしく、そうと理解しなければとてもつきあってやれないくらいの激しさです。
飼い主の私がパソコンに向かっている時、マロのやきもちは頂点に達するらしく、邪魔してやるもんねと膝に飛び乗り、机に飛び乗り、郵便物を食いちぎり、キーボードに可愛い手を置き同じ文字の連打に走り・・・・。ついでに隣に置いてるプリンターに飛び乗り、コラッ!と怖い顔をせいいっぱい作って叱ると精密機器のプリンターをぴょんと蹴とばしながら降りてはこちらをハラハラさせ、その辺を一周したかと思うと又びょんとプリンターに飛び乗り、ということを何度も繰り返し・・。
ダメと言われるのがそんなに快感なの?と真顔で尋ねてみたくもなるもの。新聞を読んでる時、本を読んでる時、ピアノに向かっている時、電話で話してる時、携帯でメールを打ってる時・・・などなど、飼い主の気持ちが何かに集中して、猫になぞかまってられない時には決まってやきもちを焼いてはてこずらせるものですから。
ボクのこと見てなきゃイヤだよ、新聞なんてそんなものどうでもいいでしょと、もし彼がヒトの言葉を話せたら、相当な嫌味や悔し紛れの毒舌を直球でぶつけてくるものかも、いや、たとえ人間にも通じる言葉を話せたとしてもあえてあてつけがましい行動に出るのではと、想像したらそりゃあ浴びせられたくはないな、勘弁してよねという心情を全身で懸命に表します。
そもそも飼い主の一番嫌がりそうなこと、一番怖い声で怒られそうなことを繰り返しするのですから、これはもう怒られたくてわざとしてるとしか思えない、やんちゃと言うにはかなり複雑でデリケートな心理を感じないわけにはいかないものです。
やきもちを焼き、あてつけるような行動を見せ、かといって可愛いにゃんちゃん、ママを困らせないいい子でしょうと、心底可愛くてほおずりしながら抱きあげるのですが、よほどそのタイミングが良くない限り、ほんの一瞬ニヤリとしつつほっとしたような素振りを見せながら、でもあっという間に抱き上げてる腕をカプッと甘噛みし、ぴょんと跳ねて窓の外の小鳥をふいに見に行ってしまったりするのです。
そうすると今度は小鳥に気を奪われて一心に窓の外を見ている猫に、なんでママに抱っこさせてくれないの!?
猫が女性にたとえられるというのはこういうことなのでしょうか・・・。
2004年 2月2日
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