稽古場のピアノ バレエピアニストの世界 WEBサイト
ご使用中のブラウザのJavaScriptをONの状態に設定してください。
稽古場のピアノ
ブログ稽古場エッセイピアノ教室リサイタルお役立ち情報

プロフィールリンクお問い合わせホーム

ホーム > 稽古場エッセイ > 過去の記事リスト > 過去の記事

稽古場エッセイ 過去の記事過去の記事リストへ戻る

35 稽古場で飲む

いや、美味しいものなのです、これが。汗のしたたる熱気と素敵な緊張感に満ちたいい雰囲気の稽古場ならなおのこと。ごくっ・・。
のっけから何言ってらっしゃるのアナタ、というような話?いえ、勘違いするなかれです。この場合、くいっと口に含むそのお飲み物はコーヒー、紅茶の類。決してアルコール飲料ではございません。

長年弾かせていただいてる稽古場の話ですが、控え室で素敵なカップにいれてくださったコーヒーや紅茶を私は楽譜と一緒に持参して稽古場に入ります。グランドピアノの譜面台の壁側のスペースにそのカップを置いて合間を見てはごくりと飲みながら又弾き続けます。調律師さんなどに見つかったら「こぼさないで下さいよー。ピアノに水分は厳禁ですよー。」と怒られそうですが、とりあえず、生徒達がタタタと突進してきてハイ、アラベスク・・・と来そうな側はちゃんと避けて置いておきます。

合間というのは先生が何か説明してる時、生徒達がバレエシューズをキャラクターシューズに履き替えてる時、次のクラスに入れ変わる時などです。
もっとも、ごくたまにですが、先生が説明をされてる時、こりゃ長いお話になりそうね、と勝手に察してほっとしてコーヒーを飲んでるといきなり「プリペア!」。おっと、この合図が聞こえたら最後、手にしてるのがいかにロイヤルドルトンのカップだろうが儚げなバレリーナの模様のピンクのカップだろうが、フォションのクッキーまでかじって両手がふさがっていようが、新聞読んでいようが(・・・いえ、外国の稽古場風景のお噂ですが・・)手は瞬時に鍵盤の上。

話は横道にそれますが、私のような場数よりは経験年数のみ長いレッスンピアニストでも「エン!」や「プリペア!」が聞こえたらほぼ条件反射で手は瞬時に弾き始めます。なんなら試してみましょう(!)。バレエのピアノを弾いてる人に何か一曲弾いて、と頼んで断られそうになったらそこですかざず「エン!」と言ってみるのです。彼ら彼女らはごねることなく、即刻何かしら音を出し始める・・・・はず・・・・。

私が受けてきたピアノのレッスンでは先生が飲み物など口にしながらレッスンされたという場面はなかったように思います。
半日、先生の御宅で過ごすようなレッスンでは、流石に途中でコーヒー(ミルクも砂糖も思いのほかたっぷり入れられ・・)など出していただき、思うように弾けず情けなくも焦り気味な私を受けとめて下さっては、じゃあ続きを、と又ピアノに向かい・・と過ごした時が有り難く思い出されます。
「ちょっとアナタ、出前のカツ丼食べながらレッスンされてらしたっていうじゃない。カツ丼よ、カツ丼。んまぁ!」というその昔の某短大ピアノ科のあるまじき飲食行為付きレッスン風景に愚痴をこぼされていらしたことはありましたが・・。

さすがにレッスン中のカツ丼こそありませんが、(あれは稽古場で弾く前に気合を入れるために食べるものです。)ふと気がつけばこの弱輩者の私のピアノのレッスン、手元に紅茶などの入ったカップが置かれ、レッスンの合間に「えーっと、じゃあスケールは今日は何調でしたっけ」などと言いながらちょっとひとくち。
こうして書くとなにやら偉そうな先生とおぼしき風情が漂ってしまいますが残念ながらまだまだスタイル止まり。しかし、師匠もなさらなかったこの「レッスン中の飲み物」、考えてみるとそうです、バレエの稽古場で得た産物なのです。

「先生、何か飲み物お持ちしましょうか?」
「あ・・・いえいえ、そんな・・・。」
「試験近くなると弾きっぱなしになるから大変ですよね。紅茶がいいですか?じゃ、今お持ちしますね。」
と言う具合に時にそうして持ってきていただいたりもしたものでしたが、長時間弾くその疲れもさることながら、一応多数の人前で弾いてる最中、しかも真剣に指導する先生と生徒達の前でひとり一服するがごとく何か飲むと言う行為がピンと来なくて、最初は遠慮がちでした。

ダンサーの水分補給は激しい運動時に必要な行為なので場によっては当たり前なのでしょうが、ピアノを弾く際、大勢の人前で飲み物を飲みながら弾くということは普通は考えにくいものです。とは言え、稽古場ピアニスト年数もそれなりに経た今となってはピアノの前で合間に新聞こそ読まないものの、ごく当たり前にごくりといただいてます。

でも、思えばこのピアニスト、特に最初の頃はよほど頼りなげな疲れた表情でもしていたのでしょう。お茶でも飲んで頑張ってしっかり弾いてくださいね・・・・だったのかもしれませんね。

ページトップへもどる


Copyright (C) 2001-2009 Hisari-Isoyama. All Rights Reserved.