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28 薬味の魅力

夏の定番メニューといえば冷奴。カロリーも控えめ、枝豆と並んでビールのお供に欠かせません。勿論バレエのお稽古に汗する体にも、安定した上体と腕の筋肉の欲しいピアノ弾きにも余計な脂肪は抑え目にたんぱく質をしっかり取れるお豆腐はお薦め食品でしょう。
冷奴といえば薬味がつきもの。いわばトッピング。かつお節、ねぎのみじん切り、おろし生姜、しその葉、梅肉になめたけ、ねぎみそ・・・・・・・こうやって書いてるだけでごっくん。既にパブロフのわんちゃん状態です。

そこで、本日はチャイコフスキー三大バレエならぬ日本三大薬味のお話。

三大薬味といえば・・・と言っても誰が言ったワケでもない、ほかならぬこのワタクシめが勝手に決め込んでるだけなのですが、やはり薬味界のベスト3はこれです。生姜、みょうが、青じそ。誰が何と言ってもこれで決まりです。ネギ、わさび、七味唐辛子等々・・・捨てがたく、又欠かせない魅力を認めつつも今回は涙を飲んで控えに回ってもらいましょう。
加えて親戚縁者友人諸々のしがらみと利害関係を振り切って心を鬼にして生え抜きのこの三者にあえて順位をつけるなら・・。
第三位、 青じそ。 第二位、みょうが そして栄光の第一位は・・・ジャン!生姜!
・・と力んでみたわりに迫力には欠けます。まあ、何と言っても薬味。基本的には脇役としての存在、添えられた時きらりと発揮するその魅力です。

さて、まずは第三位の青じそ。
これ、何と言ってもあの葉っぱの姿が楚々として美しいものです。勿論控えめにして涼やかな香りも。鯛やスズキなどの白身のお刺身の下にお座布団のように静かにそっと敷かれ、しなやかな葉っぱの先をちらりと覗かせてる姿はそれだけで魅力的。勿論お刺身と一緒に葉っぱ丸ごと食べちゃいます。
しかも細く切られた時にはその香草にしてなお素直な性格上適応能力も大きく膨らみます。ちらし寿司によし、ワカメときゅうりの酢の物によし、梅肉、白ごまとともにお茶漬けによし、スパゲッティによし、冷たいトマトの輪切りによし・・・・・。天ぷらもよし。

第二位、みょうが。
夏の薬味としては一位の生姜と激烈な接戦を交わした上、あえなく二位に。惜しいかなそのしゃきしゃきした歯ざわりと存在感ゆえ応用範囲がもう一歩かと。
みょうがも又その肢体の美しさにかけては他に類を見ないものです。ふっくらした全身の曲線美と微妙な色のグラデーション。気品溢れるその姿は薬味界の姫。あのほんわか浮かぶ紅色には日本人ならでは感じ取れる繊細な美しさが。そしてまたみょうがの花ときたらこれまたほわっと小さく白く、土からひょこりと顔を出すそのさまたるや「いとをかし」。

みょうがの美味しい食べ方といえばまず、スタンダードなところで味噌汁。油揚げと共によし、ワカメと共によし。風味豊かにしてぴりりと絶妙の辛味を楽しみながらしゃっきりする味噌汁です。
そしてもうひとつスタンダードなところで甘酢漬け。好みとしてはもうひとつ積極的にはなれないのですが、冷蔵庫で保存した甘酢漬けは暑さの中で食欲増進剤としても元気がもらえる逸品。
お薦めはサラダ。これは苦味や辛味がお好きな方には癖になるもので、この場合みょうがはほとんど異例の大抜擢、主役に近い存在です。トマト、きゅうり、軽くゆでたオクラなど夏の野菜やワカメ、しらすなどをたっぷりそして薄切りみょうがをしっかり混ぜて和風ドレッシングで。苦味の利いた大人の美味しいサラダです。勿論、酢の物、刺身のツマなどにも。

さて、栄えある第一位、生姜!
まさしく香り高くして絶妙の存在感を漂わす風味、応用範囲の広さ、歴史的な奥の深さ、もうなんといってもダントツです。おそらく生姜について調べ上げたらそれだけで本1冊書けちゃうのではないでしょうか。中国方面から眺めてみても漢方薬の材料、体を暖める生薬としての効果に始まり、薬膳としての使われ方など語り始めたらそれこそ千夜一夜物語・・。

勿論、食材としても調理法によって少しずつその存在感も持ち味も変化するという見事な柔軟性。味良し、性格良し。姿は・・・これはしその葉とみょうがに譲りましょうか。
おろし金でおろしてカツオの刺身に、釜あげうどんに、そうめんに、揚げだし豆腐に・・。おろしたその絞り汁だけでもシューマイなど料理に加えられる機会も多く、見逃せない一面が。薄切りなら、お馴染みお寿司のガリに、甘酢付けに。針千本なら歯ごたえもしゃっきり、香りも控えめにして爽やか、煮物の添え物に、お吸い物にと和食の品格をさらに高める名脇役。色んな食材との幅広い相性の良さと控えめながら毅然と主張するその香り。もう私ごときがああだこうだと口を挟む余地無しです。

でも、その幅広い生姜の美味しい食べ方、あえて唯一と選んで言わせてもらうならこのレシピ。くどくど説明は要りません。味噌と生姜。これだけあれば完璧です。丸ごと味噌をつけてガリリとかじる。これです。煮物、揚げ物、焼き魚などの並ぶ隅に小皿に乗せられたひとくちの生姜と味噌。このガリリという音と固い歯ごたえ、口の中に広がるひりひりするような辛味。野性味あるこの食べ方でこそほっぺの内側のはひはひする感覚が楽しめます。食欲も一気倍増。この美味しさを知らずに年老いるなんていけません、ある種の不幸です。これこそ定番料理、「豚肉のしょうが焼き」をも差し置いてしかるべき単独疾走で文句なしの優勝レシピです。生姜の原点に立ち返り、その存在に敬意を払うなら自ずとこの「がりり」に到達です。そう、何と言っても手間要らずですし・・・・。

根生姜、新生姜、葉生姜といわれる種類のうち、関東では夏になるとスーパーなどでも必ず見られる生姜が葉生姜です。谷中生姜、筆生姜、はじかみ生姜などとも呼ばれるもので、葉っぱも茎もついたまま売られています。その茎のところを少し残して切り、そこをつまんではお味噌をほんの少しつけてかじります。ビールに良し、日本酒に良し・・・・・・と結局は飲兵衛の戯言と相成りましてこれにて薬味談義はおしまい。

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