22 楽譜のあるなし
変なタイトル・・です。お読みいただくみなさまに冒頭からいきなりごめんなさいってあやまってしまいますが、稽古場での楽譜の扱いを巡って一人でつらつら考えているうちにどうにも頭の中がまとまらなくて身動きが取れなくなってしまいました。よし!・・というわけで、またまた例によって本日のエッセイはこれにておしまい・・・?
私の頭の中でちっともまとまらないのは一つ考えるとあっちへぶつかり、こっちへぶつかり・・そんなこんなで焦点が定まらず終止に至らず延々リピートしてしまうがためなのですが。
例えば稽古場での演奏のこんなことあんなこと。
楽譜に書かれ完成されたピアノ曲を使う、既成のメロディを使って即興的にその場でアレンジをしながら弾く、全くその場で思いついたメロディーを使って弾いてる本人もどこへ行くのか掴みきれないで弾く・・・その違いって単にピアニストの個性の違いと片付けられる・・? じゃ、バレエのピアノってなんなの、なんで即興なの?バレエダンサーの音楽性の向上ってどういう意味? バレエピアニストの質が高まるってどういうこと? 外国ではどうなのかな、稽古場でのピアニストの位置付けって「流派」によってかなり違う? そもそも「輸入品」を扱ってる日本ではどうなのかな、バレエピアニストの歴史なんて浅いでしょうから・・日本ならではのスタイルって出来てるのかな・・・・まだまだ模索中??
とまあ、頭の中に渦巻いては、たわいなく堂々めぐりを重ねるおぼろげな疑問をそのままぶちまけてしつこく羅列してしまいました。そんなことを考えてるヒマがあったらピアノを弾くべし、練習すべし、レパートリーを身に付けるべし、弾かねばならない曲の譜読みをすべし(そうそう・・!)というのがそもそも現場の人間の置かれてるところでしょうけど。あ、一つ忘れてます・・美味しいもの食べて飲んでケラケラ笑ってぐっすり寝るべし。
読書、舞台鑑賞などを含む広い意味でのバレエ経験の浅さから来る堂々巡りではあるのですが、もう少し客観的な立場からの助けが欲しい時にさて、バレエ全般、稽古場での音楽の扱いなども含むバレエ音楽を文化として学問的に扱ってる専門機関は日本にあるのでしょうか・・。
バレエを専門的に日本の大学で学ぼうというと今のところ私立の短大、専門学校で専攻できるところはあるようですが、国立の大学では舞踊というのが運動の一分野、例えば教育学部の体育の専門分野の一部としてしか扱われていないというのが現状らしいのです。お寒い話です。芸術分野がこの国ではどんな扱いを受けているのか・・・。
と言う話はさて置いて、そもそもその昔はヴァイオリンが使われていたらしいバレエのお稽古場の音楽ですが、今日にいたるまでどのように変わっていったのでしょう?
稽古場という閉じた場所で実際にどのような音楽が使われていたのか、その変遷を知ることはできるのでしょうか?
それを知るための手段のひとつは楽譜の存在でしょう。
楽譜に記すということ、出版されるということは音楽を記録し、多くの人に伝えるということです。
300年以上も昔のバッハという一人の人間の音楽を世界中で同じように享受できるのは楽譜という伝達手段があってこそです。口承という方法しか伝達手段がなく、一部の少数民族の中でのみ受け継がれる音楽は民族が滅びてしまえばそれまでです。例えば北方少数民族であるイヌイットの音楽など研究対象となり、民俗音楽の研究者が現地へ赴き、録音、採譜をして初めて形をとどめ、多くの人と共有可能なものとなります。逆に一部の地域や民族のみの中で純粋に受け継がれていって欲しい場合はあえて楽譜にしないという方法を選ぶ場合も理屈としては成り立つわけでしょうか・・。
さて、バレエの稽古場で使われている音楽です。
例えば、練り上げられ高められてきた独自の教育システムで要求される音楽にはそれなりに意味があるはずです。バレエの動きは音楽と切り離しては舞台での表現には結びつかないものであるはずです。ある一定の教育効果をあげたいのであれば当然音楽もそれに即した音が要求されるものでしょう。それをバレエ教師の側がピアニストに対し、こんな音が欲しい、こういう音楽を弾いて下さい・・と伝えたい時、その手段は口三味線?・・・・ やはり楽譜がもっとも合理的で有効な手段であるはずです。
・・・が、演奏する側にとっては世界共通言語である五線譜に表されるピアノの楽譜。これが果たしてバレエダンサーやバレエ教師との共通言語であるものでしょうか?多くの場合答えはNOでしょう。そこがバレエピアニストの辛いところです。そして又ピアニストにとってもプリエって何?タンジュってなあに? バレエの世界では当たり前の言葉が壁になります。うーん、やはり稽古場にあっては以心伝心こそ真に有効・・・か?
と、「八つになりし年父に問いて・・」の今日この頃。お読みいただく方のお時間をいたずらに奪うばかりの駄文はこのへんにて・・さて、練習練習・・・。
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