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2 稽古場の音

バレエの稽古場のドアの前に立つと、まず真っ先に音楽が耳に飛び込みます。そして、ピアノの音が稽古場いっぱいに鳴り響き、リズミカルにカウントをとる先生の声。
もうひとつ、これは稽古場の雰囲気を知らない人にとっては最もドキドキわくわくさせられるのですが、タタタタ、カタカタ・・ダダダダン!と聞こえる足音。

この足音は、稽古場に慣れない人にとっては驚くほどちょっとした迫力を持って聞こえます。いったい何の音?と最初はそれがまさか人の足音だということはピンときません。
裏にラバーが張ってあるようなごく柔らかい素材のバレエシューズを履いている時はさほどでもないのですが、つま先が硬い素材で出来ているトウシューズのレッスンになると、カタカタ、カタカタという音が一斉に聞こえてくるのです。トウシューズの音はそれを知らない人間にとっては身を引いてしまう程に圧倒させられます。
まして、キャラクターダンスの靴音といったら!ポーランドやロシアの民族的なダンスのステップの時はかかとの高さが少々あるそれ専用の靴をはいて、そのかかとの音をカーン!とかコツコツとか打ち鳴らすのです。
これらはまさしく稽古場の音です。

さて、ドアの向こう側です。
バレエのクラスの始まり。ウォーミングアップも済み、バーにつかまってプリエのレッスンです。
「足は1番で。手はブラバー。 ・・・ドゥミプリエ2回、グランプリエ1回・・・」と指導の先生が動きの順番を生徒達に説明します。
鍵盤の前のピアニストは、その説明を聞きながら曲を決め、弾く準備をします。プリエならこの曲、と、既に大体決めてはいますが、耳では先生の説明を聞き、その言葉のニュアンスでどういった感じの曲調が必要なのか捉えます。
ゆったりした3拍子がいいのか、流れるような8分音符の伴奏が必要か・・。今日のプリエはいつもと違って4拍子のカウントで説明してるから、4拍子の曲がいいのか・・。手元に何冊か用意した楽譜を急いでめくって曲を探します。
そして説明の中に時折挟まれる「One and two! 右足タンジュ!」というようなカウントを聴きながら必要な速さを感じ取ります。
いわゆるレッスンピアニストと呼ばれる演奏者はまあ、とりあえず弾き始めるまでになんといろいろなことに気をくばらなければならないのでしょう!

説明も済み、「お願いします。」とピアニストの方に声がかかり、「エン!」とか「プリペア!」というような合図でピアノを弾き始め、エクササイズが進められます。
バーのほとんどのエクササイズは一種類のエクササイズに対し、右手でつかまる方向で1回、向きを変え左手でつかまる方向でもう一回、といった風に同じ動きが2回、方向転換して行われます。勿論、曲もこの場合は同じように2回弾きます。

バーレッスンが済み、ストレッチなどを各自行った後は、センターでのレッスンに移ります。
バーを離れ、センタースペースでのレッスンになると、跳躍や回転のような華やかで力強い動きも入ります。
ゆったりした手の動きを中心としたポー・ド・ブラからシソンやグラン・ジュテのような空中で跳躍しながら開脚をするというような、いかにもバレエ!という動きに移っていくのです。
場合によっては稽古場のコーナーから対角線を使い反対側のコーナーへと跳躍を繰り返しながらひとりずつ動いて行きます。
「すみません、ひとりずつ、10人分音をください!」 こうなると同じ曲を10回、延々・・・繰り返し、止まらず、同じテンポで弾かなければいけません。長方形の床の対角線は当然2本です。「ハイ、反対側からもう一回!」

こうして稽古場のレッスンは進められ、最後はレヴェランス、挨拶です。ピアニスト、指導者の先生へと曲にあわせて生徒達はお辞儀をし「ありがとうございました!」・・・という具合に終わります。

なぜ私がこのようなバレエのピアノを弾くことになったのでしょう?
全く縁もゆかりもない世界だったのに・・。

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